体幹トレーニングはなぜ必要?スポーツ選手が知っておきたい体幹の役割

トレーニング

「スポーツ選手は体幹を鍛えたほうがいい」

スポーツをしている人なら、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

実際、野球やサッカー、バスケットボール、陸上競技など、さまざまな競技で体幹トレーニングが取り入れられています。

しかし、

  • 体幹を鍛えると何が変わるの?
  • 体幹が強いとは、腹筋が強いこと?
  • プランクを長くできれば体幹が強い?
  • 体幹を鍛えれば足が速くなる?
  • 競技パフォーマンスにはどのようにつながる?

と考えると、意外と分からないことも多いのではないでしょうか。

体幹トレーニングは、単純に「腹筋を鍛えるトレーニング」と考えるだけでは、その役割を十分に理解することはできません。

今回は、スポーツ選手が知っておきたい体幹の役割と、体幹トレーニングを行う際の考え方について解説します。

そもそも「体幹」とは?

「体幹」と聞くと、腹筋をイメージする人も多いと思います。

しかし、体幹は腹筋だけを指すものではありません。

身体の中心部には、

  • 腹部
  • 背部
  • 腰部
  • 骨盤周辺
  • 股関節周辺

など、姿勢や身体の動きに関わるさまざまな筋肉があります。

腹部だけを見ても、

  • 腹直筋
  • 外腹斜筋
  • 内腹斜筋
  • 腹横筋

など、複数の筋肉があります。

さらに背中には、脊柱起立筋や多裂筋など、身体を支えるために働く筋肉があります。

そのため、

体幹トレーニング=腹筋運動

と考えるのではなく、

身体の中心部を安定させ、身体全体の動きをコントロールするためのトレーニング

と考えると、体幹トレーニングの目的が分かりやすくなります。


体幹にはどのような役割がある?

では、スポーツ動作の中で体幹はどのような役割を果たしているのでしょうか?

スポーツでは、腕や脚だけが単独で動いているわけではありません。

例えば、

  • 走る
  • 跳ぶ
  • 投げる
  • 打つ
  • 切り返す
  • 着地する

といった動作では、身体のさまざまな部分が連動しています。

その中で体幹は、身体の中心に位置しています。

そのため、

身体を安定させる

だけではなく、

上半身と下半身の動きを支える

ことも体幹の重要な役割の一つです。

例えば、走る動作では脚を動かすだけではなく、上半身の姿勢や腕の振りも関係します。

投げる動作では、下半身の動きから上半身へと身体全体を連動させながら、最終的に腕を動かします。

このように考えると、体幹は単独で大きな力を出すためだけのものではなく、身体全体の動きを支える中心部分の一つと考えることができます。


「体幹が強い」とは、どういうこと?

では、「体幹が強い」とは、具体的にどのような状態なのでしょうか。

単純に腹筋運動をたくさんできることだけではありません。

スポーツ選手の場合には、

  • 姿勢を維持する
  • 身体の位置をコントロールする
  • 外から加わる力に対して身体を安定させる
  • 手足の動きに合わせて身体を調整する
  • 必要な場面では体幹を適切に動かす

といった能力も重要になります。

つまり、

「動かない体幹」が良い体幹とは限りません。

必要なときには安定し、必要なときには動く。

そして、その動きを自分でコントロールできることが重要です。

近年の研究でも、体幹トレーニングによって、体幹筋力や体幹持久力、動的バランスなどが改善する可能性が報告されています。PubMed

そのため、体幹トレーニングでは「筋力を高めること」だけではなく、身体をコントロールする能力を高めることも意識したいところです。


体幹は「前後」だけではなく、さまざまな方向に動く

体幹トレーニングというと、腹筋運動のように身体を前に曲げる動きをイメージするかもしれません。

しかし、スポーツでは体幹はさまざまな方向に動きます。

大きく分けると、

▪前後の動き

身体を前に曲げたり、反らしたりする動き。

▪左右の動き

身体を横方向へ傾ける動き。

▪回旋

身体を左右にひねる動き。

があります。

実際のスポーツでは、これらが単独で行われるとは限りません。

例えば、

  • 野球のバッティング
  • テニスのストローク
  • ゴルフのスイング
  • サッカーのキック
  • バスケットボールの切り返し

などでは、身体をさまざまな方向へ動かしたり、動きを止めたりする必要があります。

そのため、体幹を考えるときには、

「前後に強いか?」だけではなく、「競技でどのような方向の動きが必要なのか?」

という視点も重要になります。


プランクを長くできれば、競技で使える体幹なのか?

体幹トレーニングの代表的な種目として、プランクがあります。

プランクは身体を一定の姿勢に保つことで、体幹を安定させる能力を鍛えるトレーニングです。

基礎的な体幹トレーニングとして活用できますが、

プランクを長時間できる=スポーツ動作で体幹をうまく使える

とは限りません。

スポーツでは、身体を止めた状態だけではなく、

安定させる
↓
動く
↓
再び安定させる

というような動作が繰り返されます。

例えば、走るときには身体を安定させながら脚を動かします。

ジャンプでは身体をコントロールしながら地面から離れ、着地では再び身体を安定させる必要があります。

つまり、

体幹トレーニングでは、「静かに姿勢を維持する能力」だけでなく、「動きながら身体をコントロールする能力」も考える必要があります。


体幹トレーニングは、競技動作とどうつながる?

ここで重要になるのが、

「何のために体幹を鍛えるのか?」

という視点です。

例えば、

「走っているときの姿勢を安定させたい」

「片脚で身体をコントロールしたい」

「投球時に身体全体を連動させたい」

「切り返しのときに身体をコントロールしたい」

など、競技によって必要となる能力は異なります。

そのため、体幹トレーニングも単純に「体幹を強くする」というだけではなく、

自分の競技では、体幹にどのような役割が求められているのか?

と考えてみることが大切です。

もちろん、競技動作に似たトレーニングを行えば、その競技能力が必ず向上するというわけではありません。

体幹トレーニングは、競技練習の代わりになるものでもありません。

あくまで、競技に必要な身体能力を補うためのトレーニングの一つとして考えることが重要です。


体幹トレーニングは「何を鍛えるか」だけでなく「どう使うか」を考える

体幹トレーニングを考えるとき、

「腹筋を強くする」

「プランクの時間を伸ばす」

「難しい種目に挑戦する」

ということだけが目標になってしまうことがあります。

しかし、スポーツ選手の場合には、

「その能力を競技動作の中でどう使うのか?」

という視点も大切です。

例えば、体幹の筋力が向上しても、それだけで投球速度や走速度が必ず向上するとは限りません。

実際、研究では体幹トレーニングによってバランスや体幹機能などの改善が確認されている一方、競技特異的なスピードやパワーについては研究結果が一貫していません。PubMed

一方で、競技や対象を限定すると、異なる結果が得られる場合もあります。例えば2025年のサッカー選手を対象としたメタ解析では、ジャンプや敏捷性には改善がみられた一方、20m・30mスプリントには有意な改善が確認されませんでした。PubMed

このことからも、

「体幹を鍛えれば競技力が上がる」

と一括りにするのではなく、

「自分の競技に必要な能力のうち、体幹トレーニングによって何を補えるのか」

と考えることが重要です。


では、実際にどのように体幹を鍛えればいい?

ここまで読んで、

「では、実際にはどのような体幹トレーニングを行えばいいの?」

と思った方もいるかもしれません。

体幹トレーニングは、いきなり難しい種目を行う必要はありません。

まずは基本的な姿勢を正しく維持することから始め、そこから少しずつ動きを加えていくことが基本になります。

例えば、

基本的な姿勢を安定させる

↓

手足を動かしながら姿勢を保つ

↓

立った状態で身体をコントロールする

↓

片脚など、より難しい条件で身体をコントロールする

というように、段階的に発展させていく方法があります。

ただし、具体的なエクササイズについては、以前の記事で詳しく紹介しています。

●関連記事

「体幹トレーニングを4つのステップで解説|段階的に体幹を鍛える方法」

実際のエクササイズを画像とともに確認したい方は、こちらの記事も参考にしてください。

👉 段階的な体幹トレーニングの実践方法はこちら

今回の記事では、種目そのものよりも、「なぜそのようなトレーニングを行うのか」という考え方を理解してもらえればと思います。


スポーツ選手が体幹トレーニングで意識したい6つのポイント

ここまでの内容を整理すると、体幹トレーニングでは次の6つを意識してみましょう。

▪腹筋だけに限定しない

体幹は腹部だけではなく、背部や骨盤・股関節周辺など、身体の中心部に関わるさまざまな筋群から構成されています。

▪筋力だけを目的にしない

筋力を高めるだけでなく、姿勢や身体をコントロールする能力にも目を向けます。

▪多方向の動きを考える

前後の動きだけでなく、左右の動きや回旋など、競技で必要となる動きを考えます。

▪「安定」と「動き」の両方を考える

身体を安定させる能力だけでなく、動きながら身体をコントロールする能力も重要です。

▪競技とのつながりを考える

「この体幹トレーニングは、競技のどのような動作や能力につながるのか?」を考えます。

▪他のトレーニングと組み合わせる

体幹トレーニングだけで競技力を高めようとするのではなく、筋力トレーニング、スプリント、ジャンプ、技術練習などと組み合わせて考えます。


まとめ|「体幹を鍛える」から「体幹を使える」へ

スポーツ選手にとって、体幹トレーニングは単純に腹筋を鍛えるためだけのものではありません。

身体の中心を安定させ、姿勢をコントロールし、手足の動きを支える。

そして、必要に応じて身体を動かしながら、競技動作につなげていく。

こうした視点を持つことが、体幹トレーニングを考えるうえで大切です。

もちろん、

「体幹を鍛えれば競技力が必ず向上する」

というわけではありません。

現在の研究では、体幹トレーニングによって体幹筋力・持久力やバランスなどが改善する可能性が示されていますが、スピードやパワーなど競技特異的な能力への効果は、競技やトレーニング内容によって異なります。PubMed

だからこそ、

「体幹を鍛えれば何ができるようになるのか?」

を考えることが重要です。

体幹トレーニングの目的は、単に「強い体幹」を作ることではありません。

安定させる。

動きをコントロールする。

身体全体を連動させる。

そして、

競技動作の中で体幹を使えるようにする。

この視点を持つことで、体幹トレーニングは単なる「腹筋運動」から、競技動作を支えるためのトレーニングとして考えられるようになります。

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